「・・うみ」

この水の固まりは海
くすくす笑いながらイズミは波際に足を浸す
足の裏が砂に埋もれざーっとひいたあとに
不安定なさらさらした感触を残す

くすぐったそうに笑いながらイズミは
足を砂にかけ えいっととばす

無邪気な笑顔
他には誰もいない

全裸のイズミ 肩に赤い印がついているのが
まるで傷を受けた証のようだ

海のざざーん という音が
世界に満ちていく

「そう この海はあなたの心そのものだ
慈悲深く優しくそしてかなしい」

いつの間にか、波打ち際ぎりぎりに
コートを着た男性が立っているのにイズミは気がつく

「あなただれ?」

くすくす笑いながら海の風に髪の毛をなびかせるイズミ
うれしそうに海に向かって手を伸ばす
全裸なのはまったくきにならないらしい

波が足を襲うたびに きゃっと
声を上げ 足を上げてばたばたさせるイズミ

「私の名前は光のホーエンハイム・・といっても
今わからないかな」

小首をかしげてホーエンを見つめるイズミ
明るい瞳をくるくるさせている

「あなたはこんなにもかわいい人だったんだね」
にっこり笑い返すホーエン

「あっ もしかして ぱぱ? ぱぱなんでしょ?!」
幼い声で叫ぶイズミ

優しくうなずくと微笑んで
その場にしゃがみこみ
腕を広げるホーエン

「・・おいで イズミ」

途端に 今までの倍以上の幸せそうな顔になって
「ぱぱ!」
と叫ぶイズミ
「ぱぱ」
ジャンプして飛びついてくると
甘えたしぐさで顔に頬を摺り寄せるイズミ
ほーえんは飛びついてきたイズミを
雛を迎える親鳥のようにマントでくるんだ

自愛に満ちたしかし
寂しげな目つきでイズミを見下ろすホーエン

「・・・可哀相に 無理やり私が記憶を犯したせいで
一時的な幼児返りをしている」

呟くホーエン
イズミの頭をそっと撫でる

「ぱぱのにおいがする」
嬉しそうなイズミ
手をホーエンの顔に当てて撫でる

「パパの口パパのおでこぱぱの・・」

されるがままのホーエン
頭をことんと ホーエンの胸に落とし
急に涙目になってしゃくりあげるイズミ

「いままでどこにいってたの
イズミずっと一人でまってたの
寂しかったの」

「今までほったらかしにしてすまなかったね」

[ 無題:1・ ]




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