無題

「私にロイのスパイをしろと?!」

今俺の声は隣の秘書室まで筒抜けだろうと
ヒューズの冷静な意識はチラッと思っていたが
そんなことは今まったく関係なかった

もともと提出するよう求められた報告書は郵送しても
よかったはず。

それをわざわざ辺境から持参しろということ自体が
おかしかったのだ
ヒューズは目の前の男を敵のようににらみつけた
濃いひげとどっしりとした物腰
軍人の見本そのものを形にして
据え置いたような男が目の前にいる

部屋の空気は乾燥してい顔や肌にぴりぴりとした
緊張感を与えていた。
重い香りは葉巻の香りだろうか。
以前、上司のロイとともに以前来たときよりも
部屋の空気の重さが増しているような気がした
「いや 雰囲気に飲まれてどうする俺。しっかりしろ!」
動転したヒューズの体臭を嗅ぎ取ったのは誰だろうか

ヒューズは耳の奥で誰かのあざ笑う声を聞いたような気がした
それは神のあざけりなのか・・

[ 無題:1・ ]




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