無題

「くそっ」
ののしり声を押し殺して壁を殴りつけるヒューズ
ぎりぎりと書類を握る

女性秘書が扉からでてくる
怒気の漂うヒューズの背中をしばし無言で眺めて声をかける

「閣下も言い過ぎたと反省しております
私からもお詫びをします」

そつのない仕草で頭を下げる
「それは 閣下に言われたので言いに?」
背中を見せたまま覇気のない声でヒューズ
秘書が答える隙を与えず

「こんなもの 呼びつけるいいわけだったのだろう!」
と資料を床にたたきつける

暗い廊下に白い書類が舞う

「その資料は私が必要でお願いしたものですわ
落ち着いてください」
という秘書

ばら撒かれた書類を一枚ずつしゃがんで拾い上げ
膝の上で丁寧に手をあてしわを伸ばして集めていく

唇の端を引きつらせながら黙って集めるヒューズ
何週間か前からロイや他のメンバーと検討しながら
何夜も徹夜してまとめた報告書だった

丁寧に丁寧にしわを伸ばして集めるヒューズ

秘書の気遣う視線に気がつくヒューズ

まだ怒りでぎこちない顔を無理やり
わらいにゆがめて集めた書類を

「いきなり怒って申し訳なかった
・・これを閣下に・・」
といって差し出すヒューズ
にっこりわらってうけとる秘書

ヒューズ 至近距離で秘書の顔をマジマジと見て気がつく
「誰かに似ている」

「わかりました 確かに

といって立ち上がる秘書
思わず 立ち去る秘書に

「あの・・最近あなたと
お会いしたことは?」
と聞くヒューズ

去り際の秘書
振り返って先ほどの慈しみの表情を
かき消した顔で

「いいえ」
といい、お義理に頭を下げて去る

[ 無題:・3・ ]




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