無題

ブラッドレイの居る室内
エンヴィ窓際にすわって足をぶらぶらさせながら
茶を飲んでいる

「失礼します」
優雅に入ってきた秘書、エンヴィを見て眉をしかめる

「エンヴィなぜここに・・
きてはいけないといったでしょう
それは私が閣下に入れたものよ」

エンヴィ、カップから唇を離してふてぶてしい
笑みを秘書に返す

「たまには茶を飲みにきたっていいだろ。
もっと人並みに美味い茶を入れろよ。秘書だろ」

人並みのところで口調を強めて言うエンヴィ

飲み終わったカップを人差し指にかけて
ぷらぷら揺らしたあと 床に落とす

床に落ちる寸前で水溜りができて
割れないカップ

秘書の右腕が崩れ、液体になった元腕が
エンヴィの足元のカップに集まっている

「・・・経費を無駄にしないでエンヴィ」
穏やかすぎる声で言う秘書

ひょいとエンヴィの左手のソーサーに
カップを戻す水
秘書が軽く肩を動かすと
水がしゅるしゅると主の元に戻り
腕になる

険悪になる空気
「二人ともいい加減にしたらどうだ」
仲裁の声をかける閣下
「エンヴィお前もだ」
深々と頭を下げる秘書

宥め声を聞いて今度はエンヴィが眉をしかめて
不機嫌そうな顔になる

閣下エンヴィの不機嫌に
気がつかないふりで秘書に
ヒューズの様子をきく
秘書「かなりご機嫌斜めでしたわよ
そして私のことには多少きがついているようです」

「さっき俺が部屋にいたことも気がついてたみたいだし?」
ちゃかすエンヴィ

先ほどの動作で顔にかかった髪の毛を優雅な仕草で払う秘書
ちらりとエンヴィを見るが相手にしないことに決めたのか
何も言わない

「で つかえるのかね」
誰にともなく聞くブラッドレイ
秘書 黙って
小脇に抱えていた
ヒューズの分厚い資料を細い指で
引き裂く
そのまま細かく裂く

黙って見守るブラッドレイ
「怖いねぇ」
口笛を吹くエンヴィ

ゴミ箱に捨て一礼し、きびすを返す秘書

扉が閉まった後
「つまんねぇ女」
とつぶやくエンヴィ
思いついたようにブラッドレイに
「いいのかいこのままで」
からかう声をかけるエンヴィ

「あの方の狩りのための猟犬は多いほうがいい」
重々しくブラッドレイ

「駄犬でもかよ?」
意味もなく茶化すエンヴィ

ブラッドレイ
「なんだろうが 隙を見れば
自分の首輪を噛み切ろうとする
獣よりよっぽどましだ」
チッと舌打ちして横を向くエンヴィ
唇には薄い笑みが浮かんでいた

「犬達はその存在の不確かさから
自らを導くものには忠実であり続けようとする。
走ることができるまでなるべくいかすさ」

無言のまま肩をどうだかね というようにすくめる
エンヴィ
顎をしゃくって窓の外を指す

外をせかせかと歩くヒューズの姿が見える
その姿を見下ろすブラッドレイとエンヴィ
窓をまぶしそうに見上げるヒューズ
二人の姿はみえていないらしくまた
歩き出す


部屋の外から鳥の声が聞こえ
ふんと鼻を鳴らすエンヴィの声の後は沈黙が
漂うだけになった

「すべてはあの方のお心のままに」
低い声が部屋を満たしそして消えていった



[ 無題:・4 ]




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