「・・もし夢で誰かを一人抱けるとしたら
だれがいい?」

夢の中の黒髪の美女が
豊かな髪をなびかせながら

背丈の高い俺の知らない男の腕の中で
こんな顔もできるのかというほど
穏やかな顔で俺に問いかけてきた


俺は冷たい瞳で応える
「俺は俺の望むものを自分で奪う」


『・・は何を望む』

暖かい久し振りの感触に
ハッとして見下ろせば
金髪の小柄な少年が無邪気な笑顔をふりまき
ながら俺の手をつかんでいた

「・・触るな!」
思わず振り払う


「ねえ 教えてよ お兄ちゃん」
小さい手がおれの手を掴んで離さない
その暖かさに俺は背筋を凍らせ同時に
どす黒い感情をこらえきれなくなる

これ以上触るな・・おまえ殺すぞ
冗談抜きの殺意を声にこめたが
もう足元には誰もいない

代わりに
ごつごつした腕が俺を後ろから
羽交い絞めにして
抱きしめる

甘い甘い
死者を弔う花の香りがする

俺が本当に会いたかった相手
殺したい相手

背中から抱かれて身動きの取れない俺の
視界の端を金髪が流れる

何度も俺が使える変身能力を使って
真似した相手

『愛している』
低いつぶやく声に
俺の記憶は混乱する

抱かれた柔らかい曲線を持つ身体が応える

『・・うれしい』

これは俺の記憶なのか 母親の記憶なのか
俺にはわからない
背中の毛が逆立つほど忌まわしい
幸福の波動
俺はそいつの胎内で歯噛みをする


『・・・』
交わされる
それは生まれたばかりの俺が知るはずもない
名前

あいつと母親しか知らない名前
400年というはるか昔
肉体をさなぎのように脱ぎ捨てることを
選んだ二人がゴミ箱に捨てた名前



時間は俺にとって敵
すべていらない
すべてほしい
戻らないあの時間も
現在も
すべてに焦がれて嫉妬する
・・・それが俺

[ 無題:1・ ]




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