俺はゆっくりと目を覚ました

覚えのない百合の香りがどこからか漂ってくる

ゆっくりと首をめぐらす

隣には 金髪の少年が
静かな呼吸を繰り返していた
鈍いゆがんだ部屋の光が金髪を鈍く照らしている


「・・400年後にやっと手に入れた魂の半身か」
悪夢を見たせいか やたらと喉が渇く
俺は内心舌打ちしてごそごそと起き上がった

芥子の煙と花のにおいが重い


「せっかく手に入れた大事な大事な
弟の身体なのに
丸1日中そうやって そうやって
幸せそうな顔をして
顔だけ眺めているつもりなのかしら
エンヴィ」

皮肉そうなやや安定さにかけた
とがった声を投げかけてきたのは
若い女の姿をまとったもの
しかしその魂は 何百年も前から
細々と生きてきた死者

その名前は ダンテ

「いまさら悪趣味じゃない?この匂い
何十年前の風習だよ」
気のない返事を返し
興ざめしたような紫の瞳を相手に向ける
姿だけは若い男の子の姿

これが俺。黒い髪白い肌
そして赤いウロボロスの烙印
をつけられ、ダンテが生み出した

人ではない 人から造られた生き物

嫉妬の名前を持つ エンヴィ


放って置くと椅子を持ち出して居座りかねない
母親のような ものにむかって

「いい加減俺の目の前から消えてくれない?
目障りだからさ」

苛立ちのまま言葉の牙を剥く俺

動じないダンテ


「大体 この子はどうやって連れてきたのよ」

あごをしゃくって眠っているのか
まったく動かない金髪の少年を
忌々しそうに見下ろすが

自分の感情に負けたように
目が和み、
唐突に少年の髪の毛に手を伸ばす

「・・400年の月日を越えて
やっとできた子供と聞いて私はどれだけ
悔しかったことか。悔しいけど
どこか似てるわね 髪の毛の色とかあごとか」

「あなたと違って」

俺を見た冷たい目の光


「触るな!!」

気がつけば俺はダンテの手を
叩いていた

じっと叩かれた手をさすりながら
深い湖のそこのような目で俺を見る
ダンテ


眠る少年を挟んでしばし見詰め合う親子


「(なんでだろう
いつも先に視線をそらしたのはいつも俺になる)」


[ 無題:・2・ ]




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